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溶連菌感染症について


2024年05月01日

 大流行したアデノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス感染症は下火となりましたが、溶連菌感染症は流行が続いています。
 A群β溶血連鎖球菌という細菌が原因で、飛沫感染や接触感染によって保育園、学校、家族内で伝染します。潜伏期間は2〜5日、好発年齢は2〜10歳で、成人も感染します。
 症状は、激しい咽頭痛、発熱、発疹、腹痛、嘔吐、イチゴ舌ですが、猩紅熱(scarlet fever)と呼ばれる特徴的な鮮紅色の細かい発疹がみられるのは約20%にすぎません。
 診断は、溶連菌独特の咽頭所見に加えて、綿棒で咽頭・扁桃をぬぐって迅速診断キットで菌の存在を確かめます。治療はペニシリン系抗生物質を10日間内服します。翌日には熱も下がり元気になりますが、薬は指示どおり最後まで飲み続けて下さい。途中でやめてしまうと再発したり、急性腎炎、リウマチ熱というやっかいな合併症が3〜4週間後に出現することがあるからです。抗生剤を内服して24時間すれば伝染力はなくなるので登園、登校は可能です。
 きちんと内服しても10%近くは1〜2ヵ月以内に再発します。溶連菌は人間の免疫防御機構を巧妙にすり抜ける忍者のような細菌で、何回でも感染するのです。延長保育で1日2回しか抗生剤を内服できない場合には、除菌の妨げになることもあります。
 現在国内ではペニシリン系抗生物質が供給不足であることに加え、迅速診断キットも不足気味です。また、小児ではまれですが「人食いバクテリア」と呼ばれる劇症型溶連菌感染症が問題になっています。進行が非常に急激かつ劇的で、筋肉周辺組織の壊死を起こし、敗血症から多臓器不全、ショック状態に陥り、発病後数十時間で死に至ることも少なくありません。
 溶連菌にワクチンはありません。予防には、毎日の手洗い・うがいが重要です。
                                            広報委員会  北原文徳