読本52
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① 認知症の症状の考え方 認知症では記憶障害や幻覚、失語や脱抑制といったさまざまな症状が特徴的ですがそれだけではなく、たくさんの症状が出現します。これらの症状は大きく二つに分類されます。ひとつは中核症状、もうひとつは周辺症状です。 中核症状とは病気そのものの症状で、大脳の一部が障害されることによって起こってくるものです。例えばアルツハイマー病では海馬が壊れることによって記銘力障害が起こってきます。さらに病気がすすみ、少し前の脳が壊れてくると、物事の段取りができなくなる実行機能障害が、後ろが壊れてくると見たものがなんだかわからない失認という症状が起きてきます。このように中核症状は大脳の一部の機能低下によって必ず起こってくる症状です。 これに対して周辺症状は中核症状をもととして、環境や対人関係、健康状態などのストレスが加わることで出現してくる症状です。たとえば記憶障害のある人に、寂しさや焦り、対人関係の歪みからくるちょっとした不信感などがあると、ものがみつからないときに「あの人が盗ったに違いない」と思い込む「もの盗られ妄想」が出現します。これはアルツハイマー病では実によくみられる周辺症状のひとつです。また記憶障害のある人がプライドを傷つけられる言動や苛立ちなどがつもってくると、怒りっぽいという症状がでたり、環境の変化や不安、興奮などといったストレスが加わることで徘徊といった症状が出たりします。 このようにして出現した周辺症状は易怒性、徘徊、介護への抵抗、暴言暴力といった、介護している家族や周囲を振り回してしまう精神症状・行動障害であることから、介護の現場では「BPSD(認知症の行動・心理症状)」と呼ばれています。このBPSDは、原因となるストレスを改善させることで軽くすることができます。そのためBPSDに出会ったときや介護を大変にさせるような症状をみたときは、認知症の人を苦しめているストレスは何であるのかをみつけ、それを取り除いてあげることが必要なのです。このBPSDが軽くなると介護はずいぶんと楽になります。4認知症の症状と治療11認知症の症状と治療

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