健康読本53
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うつ病を取り上げてみましょう。強いストレスを受けていても、うつ病にならない人がいる一方で、通常のストレスでもうつ病を発症する人もいます。この違いには、うつ病のなりやすさ(脆ぜい弱じゃく性せい)あるいはなりにくさ(レジリエンス)が関係していると考えられています。脆弱性やレジリエンスは、その人の生まれ持った素質と、育ってきた環境のなかで獲得するストレスへの対応力と関連すると考えられています。たとえば、幼少期に虐待を受けて育つと、成人後にうつ病になりやすいことがわかっています。 こころの病気の種類により、ストレスと脆弱性の関与する割合が異なると考えられています。ストレスが主因で起こり、それが取り除かれると速やかに回復する病気の典型的なものが適応障害です。上司からパワハラを受けて、気分が落ち込み、食欲をなくし、夜よく眠れなくなり、出社できなくなった人が、配置転換によりパワハラを受けなくてすむようになり、しばらくして元のように健康になったという場合が該当します。一方、ことさら強いストレスを受けたわけでもないのに、気分が不安定になり、うつ状態と躁状態を繰り返す双極性障害や、幻覚、妄想、思考のまとまりの悪さなどが症状として現れる統合失調症などは、脆弱性の占める割合が比較的大きいと考えられています。 ただし、脆弱性がどのような脳の状態なのか、こころの病気がなぜ起こるのかは十分に解明されていません。今日、脳科学研究が世界中で盛んに行われています。脳は人体の中で最も複雑な臓器ですが、人類はいずれこころの病気の原因を突き止め、今よりも優れた治療法を手に入れると信じています。3こころの病気にはなぜなるのですか?8わたくしたちの健康読本
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