新型コロナウイルス感染症「5類」引き下げ―安易な引き下げは危険―
2019年1月15日に初めて国内で新型コロナウイルス感染者が確認されてから3年になった。1月8日にはわが国の感染者数は3000万人、死亡者は6万人に達した。新型コロナウイルス感染症は、感染力が強く重症度も高い感染症として、2019年2月に感染症法で「2類相当」に位置付けられた。昨年からオミクロン株が主流となり、重症化率や致死率が低下したことなどから、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」へ引き下げられることになった。しかし、安易な引き下げは危険を伴う。感染力の指標である基本再生産数は、季節性インフルエンザは1.3、オミクロン株は9.5とされている。第8波に入り新型コロナ死亡者数は急増し、昨年12月から2カ月で1万5000人以上、累計死亡者のおよそ4人に1人となった。「5類」になれば、自治体による入院勧告や行動規制、感染者の療養期間や濃厚接触者の待機期間がなくなり、感染者の把握も定点観測に簡素化される。医療費が自己負担となり受診抑制が起こり、感染が野放しになり感染拡大を招く可能性がある。中等症以上で入院が必要な場合、保健所の入院調整がないと診療した医療機関が入院先を探すことになり負担が増える。コロナ患者の受入医療機関に対する病床確保料がなくなりコロナ病床が減少し、今まで以上に入院が困難になるかもしれない。「5類」になり「一般の医療機関での診察も可能になる」との意見もあるが、感染力の強いコロナ患者をインフルエンザの如く院内で診療すれば院内感染のリスクを高めてしまう。発熱外来に対する診療報酬加算がなくなれば、新たにコロナ診療する医療機関が増えるとは思えない。世間がウイズコロナとなっても医療現場ではゼロコロナが必須である。変幻自在の難敵である新型コロナに対してソフトランディングとなる最適解が求められている。