災害に弱いデジタル社会―まさかの時の頼りは何か―
現行の健康保険証が、本年12月2日に廃止され、マイナ保険証に一本化されることが決まった。「マイナ保険証は医療DXのパスポート」と武見敬三厚労相がアピールしているが、その信頼性が揺らいでいる。マイナンバーと紐付けられた健康保険証の情報が、住民基本台帳と一致しないケースが87万件以上あることが判明している。また、全国保険医団体連合会は、調査した医療機関の6割以上でオンライン資格確認のトラブルが発生し、医療費を全額請求した事例が少なくとも753件あったと報告している。マイナポイント導入により、マイナンバーカードは国民の73%まで普及した。しかし、国民の不信感から、マイナ保険証の利用率は、昨年4月の6.29%から、昨年12月には4.29%まで低下している。さらに、本年1月の能登半島地震ではマイナ保険証の弱点が浮き彫りになった。河野太郎デジタル相は、「マイナンバーカードと一緒に避難を」と発言したが、電気も通信も遮断された避難所では、マイナ保険証の活躍の場はない。平時でさえ信頼出来ないカードは、有事ではただのプラスチックに成り果てる。災害医療の現場では、医薬品は命をつなぐ必需品である。東日本大震災では、津波で薬が流されても、多くの方がお薬手帳を持って避難され、スムーズな医薬品提供に役立ったことが報告されている。停電でシステムが動かない場合には、従来の保険証やお薬手帳によるアナログ対応が有効である。まさかの時の救いの“紙”である。