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脱炭素社会とクリティカルミネラル争奪戦―我が国のレアアース代替技術開発―


 地球温暖化現象が大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇によるものとされて久しい。2023年12月にドバイで開かれた国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、「化石燃料からの脱却」に向けたロードマップが承認されたが、石油、石炭、ガスの「段階的廃止」は合意文書には盛り込まれなかった。化石燃料が使用禁止となった社会は、どのような風景となるのだろうか。おそらく、太陽光発電システムに覆われた山々、いたるところ小規模水力発電所、様々な形の風力発電所が見られ、温泉地帯は地熱発電所となり、風光明媚な我が国の自然の風景は消滅の危機におちいるであろうことが予測される。
 脱炭素社会の実現には、電気自動車、水素燃料自動車または水素と酸素を利用して発電した電気で走る燃料電池自動車など、高性能な磁石や電池が必要となる。レアアースは中国依存度が高く、中国政府は今後の輸出制限(あるいは禁止)に向けた検討を進めている。日本の企業は、科学技術安全保障対策として、その目的に応じてレアアース使用削減の取り組み「代替技術開発」を行ってきた。
 これまでに、プロテリアル(旧・日立金属):ネオジウム磁石と置き換え可能なフェライト磁石、デンソー:鉄とニッケルだけでネオジウム磁石と同等以上の性能を持つ磁石、東芝:ネオジウムを入手しやすいサマリウムに置き換え、その使用量も半減させた磁石、日産自動車:電気自動車用モーターの磁石について、レアアース使用量を磁石重量の1%以下に削減、東レ:レアアースを使わない高耐久性ジルコニアボールの開発など、様々な用途に応じたものの開発が進められ実用化を急いでいる。