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開業医の未来―絶滅危惧種になるのか―


 厚生労働省の報告(2022年)によれば、開業医の平均年齢は62.5歳、平均引退年齢は73.0歳とされている。開業医の高齢化が進行し、後継者不足が問題となっている。この背景には2004年から始まった新医師臨床研修制度の影響がある。医学部卒業後すぐに大学医局に入るのではなく、初期研修を経て専門分野や勤務先を自由に選択できるようになった。医師の働き方は旧来の医局制度に縛られることなく、ワークライフバランスを重視する傾向が強まった。心臓血管外科や産婦人科といった緊急性が高く時間に拘束される分野や、地方での勤務を敬遠する傾向が見られている。また医師の働き方が見直され勤務医の労働環境が改善されてきた。65歳定年まで病院で働き、その後は雇用延長のほかにも、健診医や老人施設の嘱託医として働く選択肢がある。以上から、開業志向の医師が減少し、とくに条件の良くない地方で開業する医師は少なくなっている。さらに、医学部受験の難化により、開業医の世襲が難しくなり、開業医の数が減少する一因となっている。開業医の減少は、地域医療の崩壊につながる可能性も孕んでいる。こうした課題に対応するため、日医総研から都道府県医師会で医業承継の相談窓口を設置し、日医の全国規模のマッチングシステムの構築を提言している。医師を地方へ誘引するためには、都市部と地方部の医療環境の格差を是正し、地方でも専門医資格を取りやすくすることや、子弟の教育環境を充実させることなどが課題となる。魅力ある地方再生なくして地域医療の再生は実現しない。