HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて思う―ジェンダーニュートラルな接種の促進を―
HPVは子宮頸部、中咽頭、肛門、膣、陰茎などの扁平上皮がんの原因になります。HPVワクチンは子宮頸がんの予防・削減を目的として2006年以降、世界各国で公的接種が行われるようになりました。WHO(世界保健機関)も接種を推奨しており、2024年1月時点で140か国以上で公的接種が行われ、59ヵ国で男子にも接種が実施されています。さらに、オーストラリア、カナダ、英国では男子の接種率が70%を超えています。昨年、スコットランドの研究において、「1988年~1996年生まれで13歳までにワクチン接種を受けた女性45万人を追跡したところ、25歳の検診で子宮頸がんの発症例は確認されなかった」とする結果が報告されました。このように、HPVワクチンが子宮頸がんの発症を大幅に抑制する効果があることは明らかです。また、安全性についても、国際的に非常に高い評価を受けています。
一方、米国では子宮頚がんより男性の中咽頭がんの症例数が増えているというデータがあります。現在、HPVワクチンは単に集団免疫の効果を狙って子宮頸がんを減らすためだけでなく、接種者自身の中咽頭、肛門、膣、陰茎などの扁平上皮がんを予防する目的でも接種されるべきワクチンと考えられます。我が国においても、国際的に広く使用されている9価ワクチン(子宮頸がんの原因となるHPVの型の8~9割を予防)を、15歳未満における2回接種の形で公的にジェンダーニュートラルに推進するべきではないでしょうか。