日本にカジノは必要か ―ギャンブル依存症とカジノ法案―
「ギャンブル依存症」はれっきとした精神医学の疾患名であり、「病的賭博」「病的ギャンブリング」「ギャンブル障害」とも呼ばれます。そのギャンブル依存症の有病率が我が国では4.8%、500万人以上の依存者がいることを厚労省の研究班が発表しており驚きます。
なぜギャンブルに耽溺するのか。単に一攫千金を狙う欲では説明がつかないようです。そこにはアルコール、タバコ、麻薬やドラッグなどと共通する「嗜癖」のメカニズム、すなわち脳内物質が複雑に絡む生物学的変化があるようです。ゆえに、いつの間にか嵌まってしまうギャンブル地獄。経済的にも、社会的にも、人間的にもどん底へと落ちてゆきます。
社会問題につながる此の病気の予防と治療への取組は我が国の喫緊の課題であります。然るに、ギャンブル依存症患者拡大の危険性をはらむ法案提出が画策されています。日本のカジノ解禁を目指した「総合型リゾート整備推進法案」です。アベノミクスの成長戦略として期待されるカジノの合法化ですが、カジノ・ギャンブルはそもそも非生産的経済活動であり、まっとうな経済発展に寄与するとは思えません。カジノは国民の健全な精神を蝕むものであり、日本医師会も、厚労省も「カジノ法案」には断固反対すべきです。