多国籍企業の行動に規範を ―むやみにグローバル化を推進するな―
昨年7月より我が国も環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を表明し交渉に加わった。しかしこの協定が同意に至れば、医療分野では高価な新薬の特許期間が大幅に延長され、高額な医療機器がほぼ独占状態で販売され、保険の自由化と混合診療の導入により国民皆保険制度のなし崩し的解体に至るのは明白である。その結果我が国が今まで蓄えてきた富が海外に流出し、1000兆円を超える財政赤字と相俟ってこの国がデフォルト状態に陥る可能性が高まるものと危惧される。
TPPを強力に押し進めているのは保険、医療、IT、小売り、映画産業など、多くは米国の多国籍企業である。多国籍企業の活動はつかみにくく、また国内法での取り締まりには限界がある。その隙を突き、多国籍企業には未だその行動を監視し、取り締まる国際法が未整備のうちに利益を得てしまおうとする思惑が垣間見られる。
急速にグローバル化が進みつつあるが、価値観は依然として国単位、企業単位であり、行動規範は未だコンセンサスが得られていない。グローバル化の価値観が確立し、それに沿った国際法が整備されるまでは、むやみにグローバル化を推し進めるのは時期尚早と言わざるを得ない。