二つの「介護離職」 ―拙速な対応より介護保険制度の充実を―
少子高齢化の日本は様々な問題を抱えています。介護問題もその一つです。中でも二つの「介護離職」は深刻です。
一つ目は、家族を介護するために余儀なくされる離職で、年間10万人が仕事を辞めています。ベテラン労働者の喪失は現場に限らず社会の損失です。安倍政権は「介護離職ゼロ」を目指すと宣言していますが、そこで問題となるのが、もう一つの「介護離職」です。すなわち介護職の離職率が16∼17%と高く、2025年には38万人の不足が懸念されています。
一方、政府・与党は我が国が労働者不足の状態にあるとし、入管難民法などを改正して外国人労働者の受け入れを促進する方針です。介護の分野でも5年間で6万人を見込んでいるようですが、この対策は国会審議などを見ると拙速さを否めず、これまでの外国人技能実習制度の問題点や人権擁護の観点、将来性など熟議すべき事が置き去りにされています。
そもそも介護職の離職は個人の本意とは限りません。きつい仕事にもやりがいを感じ、献身的に働く人々には頭が下がります。けれど、離職・転職せざるを得ない。そこには雇用・労働環境や資格制度などの根本的な問題があります。介護職の待遇改善を図り、潜在的介護労働力(介護職初任者研修修了者380万人)を活用し、「介護の社会化」という介護保険制度本来の理念に立ち返り、今ある制度を更に充実・発展させる取組こそが、その場凌ぎの新たな対応に走ることよりも大切ではないでしょうか。