我が国はバイオ医薬品製造後進国である―バイオ医薬品の国内製造に協力を―
2017年度の国民医療費約42兆円のうち薬剤費は約10兆円でした。薬剤費はこの10年間で約3兆円増加し、そのうち輸入薬が約2.5兆円でした。バイオ医薬品を中心とした輸入薬の増加が薬剤費の増加に大きく関与しています。
2018年度の医薬品国内売上高トップ10のうち4剤がアバスチン®、オプジーボ®、キイトルーダ®、レミケード®といったバイオ医薬品でした。また、2020年にはバイオ医薬品は世界の医薬品市場の約35%に達し、さらに増えることが予想されています。
残念なことに、現在国内ではバイオシミラー(特許が切れたバイオ医薬品の後発品)を含むバイオ医薬品のほんの一部(2016年で5%未満)しか製造できません。原因はバイオ医薬品の製造基盤整備が遅れているからです。バイオ医薬品の開発が各国で盛んになった約20年前、生活習慣病薬の開発に力を入れていた国内製薬会社は、開発初期の段階で何百億円かかるバイオ医薬品の商用製造設備の投資に逡巡しました。製造していなかったため商用化のノウハウが得られず、また、製造技術に精通する人材が産官学ともに育たないという悪循環に陥ったようです。したがって、我が国はバイオ医薬品のほとんどを輸入するしかなく、これらの薬剤を使えば使うほど医療費が国外に流出する事態になっています。
この事態を打開するために国は2015年に医薬品産業強化総合戦略を策定し、関係団体に強力な支援を開始しています。同時に大切なことは、まず国民が「我が国がバイオ医薬品製造後進国である」ことを認識すること、次に産官学がバイオ医薬品の国内製造に向けて各団体の利害を超えて国のために協力し合うことではないでしょうか。これから、欧米のみならず中国、韓国、台湾などを追いかけなくてはならないのですから。