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―句読点の点はテンニアラズ―

公用文作成の要領―句読点の点はテンニアラズ―


 令和3年3月21日の朝日新聞に掲載された記事に個人的に驚いた。これまで私が理解していた句読点の用法が全くの誤りであったからだ。昭和27年4月4日付けで,内閣官房長官から,各省庁事務次官あて依命通知(内閣閣甲第16号)された「公用文作成の要領」のなかで「句読点は,横書きでは『,』および『。』を用いる。」と明記されているというのだ。このルールが約70年ぶりに改められ,『,』を『、』(テン)とする,文化審議会国語分科会がそのような提案を打ち出したというのだ。70年ぶりの改訂ということではなく,句読点の使い方にそのような公的なルールがあったことを全く知らなかった。縦書きの日本語なら『、』と『。』だから,横書きにしてもそのルールだと勝手に思い込んでいたが,論文執筆の時は『,』と『.』を使うことが多かった。そのため『,』と『。』のペアなどは思いもよらなかったのだ。そこで私の蔵書がどうなっているか適当に調べてみたところ,中学生の時に読んでいた模型飛行機の月刊誌は見事に「,。」を用いていた。音楽雑誌も「,。」の組み合わせでよろしい。しかし,医学系書籍となると「、。」あるいは「,.」のペアばかりであった.件の新聞記事には山川出版のケースが引用されており,そこは教科書でもそれ以外でも「,。」の組み合わせだという。どうも出版社のポリシーがあるようだ。たぶん「公用文作成の要領」を認知している出版社は「,。」を求め,それを認知していない出版元はそれとは異なっている,そのような気がする。では,長野医報は如何に・・・ごらんのとおりである。長野県医師会としては公用書物でもあるので,ここはひとつルールに従うのでしょうか。
 また,そのほかの記述についても興味深いものがあった。時および場所の起点を示すには,「から」を用いて,「より」は用いないという。「より」は,比較を示す場合にだけ用いるという。たとえば「午後1時から始める。」「長官から説明があった。」そして,音読する言葉をなるべくさけ,耳で聞いて意味のすぐ分かる言葉を用いるのだそうだ。例えば,堅持する⇒かたく守る,陳述する⇒のべる,などのように。
還暦を目前にして,楽しい発見に出会えた。朝日新聞の記事に感謝である。まさか,これが誤報でないことを願っているが。