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―悲惨な交通事故を減らすために―

高齢者の免許返納―悲惨な交通事故を減らすために―


 高齢者の運転する自動車による事故の報道が後を絶ちません。2019年4月には東京の池袋で87歳の男性が運転する自動車が暴走し、母子2人が亡くなるという痛ましい事故がありました(運転者の過失運転致死傷の罪については現在裁判中)。この事故の影響もあるのか、2019年に運転免許証を自主返納した人は全国で60万1022人で過去最高であり、そのうち75歳以上は35万428人でした。しかし、2020年は75歳以上の人の自主返納が29万7452人に減少した影響で、総数では55万2381人と前年より4万8641人減りました。2020年末時点で75歳以上の運転免許保持者は約590万人ということです。
 現在75歳以上の方の免許更新には認知機能検査の受験と高齢者講習の受講が義務付けられていますが、高齢ドライバーの関与する事故の割合が増えている現状を見ると、その実効性には大きな疑問符が付きます。個人差はあると思いますが、加齢とともに運動機能だけでなく視力、聴力といった知覚、注意機能や状況判断などの認知機能が低下することは容易に想像できます。これらの機能の低下は簡単な運転操作の誤りに始まり、標識の見落とし、アクセル・ブレーキの踏み間違い、前方の車の速度の読み間違い、道路の逆走といった事故に繋がりやすいのではないでしょうか。自動車は日々進化し、交通事故をおこし難い装備が開発されています。しかし、実際に自動車を運転するのは人間です。議論が乱暴で飛躍していると言われそうですが、池袋で起きたような悲惨な事故をこれ以上増やさないようにするには、高齢者の免許返納を増やす以外ないのではないでしょうか。そのためには高齢者が免許を返納しやすい環境を整える必要があるのではないかと考えております。