最新鋭の日本式・石炭ガス火力発電設備―エネルギーの確保は安全保障上の問題である―
従来の火力発電は、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の燃焼によって得た熱エネルギーを原動機によって運動エネルギーに変換し、発電機を駆動して電気エネルギーを発生させる方式である。その熱転換率は、かつては30%前後と言われたが、我が国の技術革新により50%程度にまで改善されていた。
近年、天然ガスを燃料とした最新のガスタービン・コンバインド・サイクル(GTCC)という発電技術で、熱転換効率が世界最高の64%以上を達成した。さらに燃料の天然ガスを石炭ガス化技術によって製造された「石炭ガス」に置き換える形で登場した石炭ガス化複合発電プラント:Integrated coal Gasification Combined Cycle (IGCC)が広島県の大崎発電所(16.6万?)と福島県の勿来発電所(52.5万?)に完成し、さらに9月には福島県広野火力発電所(54万?)が完成予定である。
一方、我が国のIGCCの大気汚染物質の排出量(g/kWh)の2009年値では、同じ年ではないものの2005年の値との比較で、Soxがドイツの2.9%、米国の0.6%、またNoxがドイツの7.5%、米国の5.0%と報告されており、環境汚染対策でも著しい進歩を遂げている。またCO?については、CO?回収・貯留技術として化学吸収法、物理吸収法などが用いられている。
ごく最近、経済産業省は石炭火力発電所について削減していく方針を発表した。しかし世界中でエネルギー需要が増える中、発電量の不安定な再生可能エネルギーのみに依存するわけにもいかず、また輸送航路の安全性も不安定で、ほぼ100%輸入に頼る天然ガス市場の高騰や原子力アレルギーによる原発再稼働阻止運動など、今後様々な困難が予想される。石炭はより安価で入手可能であるうえに国内でも調達可能である。今後、IGCCはエネルギー安全保障上むしろ必要性が高くなると思われる。