COP26:グラスゴー気候合意―石炭火力発電は廃止可能か?―
英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では石炭火力発電の「段階的廃止」を目指したが、採決直前に中印の反対で「段階的削減」とされた。地球温暖化の要因となる温室効果ガスの削減のために石炭火力発電がターゲットとなった。わが国の大型石炭火力発電所に採用されている超々臨界圧発電方式(USC)では、エネルギー効率が従来型の36%から41%まで高められ、二酸化炭素排出を石油火力発電並みに抑えている。効率の悪い中国やインド、米国の石炭火力発電をUSCに変更すれば、わが国全体のCO2排出量(約13億トン)に匹敵する二酸化炭素を削減できることになるという。不安定な再生可能エネルギーに頼るよりは、高効率で二酸化炭素の少ないUSCや石炭ガス化複合発電(IGCC)を普及させることが現実的と思われるが、その先端技術は欧州にはない。技術競争では勝てない場合、自分たちに都合がいいようにルール変更するのは欧州の常套手段である。欧州では風力発電、水力発電、原子力発電で比較的容易に石炭火力を減らすことが出来る。石炭火力発電を段階的に廃止するのは欧州だけでいい。COP26が開催された時期に英国では、偏西風が弱く風力の発電量が不足し、石炭火力発電で穴埋めする綱渡りの電力供給が続いていた。風が吹かず、ロシアからの天然ガスが高騰している欧州では、この冬は粗煤(ツメ)に火を点すことになるかもしれない。