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肺炎球菌ワクチン


2017年09月01日

1:肺炎球菌とは?
肺炎球菌は肺炎双球菌とか肺炎レンサ球菌とも呼ばれ、グラム陽性(グラム染色という細菌の染色法により濃紫色に染色される)で直径約0.5μmの球菌で、健康なヒトの10%程度で咽喉や鼻腔に常在しており、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、細菌性髄膜炎などの主要な起炎菌です。この菌は最外層に厚い莢膜と呼ばれる多糖類のカプセルを持っており、食細胞(好中球やマクロファージ)による貪食(食細胞が細菌や異物を細胞内に取り込むこと)に抵抗し殺菌されにくいため、高い病原性を示します。肺炎球菌は、この莢膜中の多糖類の沈降反応(抗原と抗体との反応により沈殿物を生じる反応)により83種類の血清型に分類され、この内、1、2、3、4、5、7、8、14型で死亡率が高いといわれています。

2:どのような人が接種を受けた方が良いの?
近年、肺炎球菌の中でも高頻度に見られる23種類の莢膜型に対するワクチンが開発され、成人に対してその接種により肺炎球菌感染症の患者が重症になったり死亡したりする頻度を低下させようとする試みがなされています。免疫力の低下している高齢者や、何らかの疾患で過去に脾臓を摘出された患者、心臓、呼吸器、腎臓、肝臓などの慢性疾患、糖尿病などの基礎疾患のある患者、鎌状赤血球症やその他の血液疾患で脾機能不全がみられる患者などにワクチン接種が推奨されています。

3:小児へのワクチン接種
小児では平成25年11月から7種類の莢膜型に対するワクチンで始められ、肺炎球菌による肺炎のみならず細菌性髄膜炎、菌血症、中耳炎などに対する予防効果が認められています。発症すれば重症となる細菌性髄膜炎は、このワクチン接種で71%も減少しました。最近、13種類に対するワクチンに変更されて、さらなる効果が期待されています

4:高齢者へのワクチン接種
また65歳以上の高齢者では平成26年10月からワクチンの定期接種が行われるようになっています。その効果については、全国レベルでの大規模な結果の発表が待たれるところですが、長崎大学の研究では、23種類の血清型による肺炎球菌性肺炎を33.5%減少させ、全肺炎球菌性肺炎を27.4%減少させることを明らかにされました。これにより、肺炎による高齢者死亡が抑制されることが期待されています。

ワクチン接種についての情報は、かかりつけの医療施設や最寄りの保健福祉事務所などにお問い合わせください。
広報委員会  吉村一彦