慢性の呼吸器症状に慣れてしまってはいませんか。
2019年11月01日
慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎などを始めとした慢性呼吸器疾患には、咳、痰、体動時の息切れ、呼吸困難など様々な症状があり、患者さんによって呼吸困難の症状は「息苦しい」、「胸が締め付けられる」、「空気がうすくなった」などの表現がされています。そして、呼吸困難の改善は日常生活の活動に、肉体的にも精神的にも良い影響を与え、「生活の質」も向上させることが分かっています。呼吸困難の症状は、動脈血中の酸素や炭酸ガスの分圧の影響を受けていますが、患者さんは低酸素状態や高炭酸ガス状態が進行しているにもかかわらず、それほど苦しくはないと呼吸困難感を訴えないことがあります。特に、比較的軽症の間は肺の病気があっても、病気が徐々に進行しつつあっても、軽度の酸素不足には何も感じられない「慣れ」が生じ、安静時には全く苦しさを訴えないことが普通のことです。そのため患者さんの自覚症状は、肺の病気の進行状態とは必ずしも一致しないことが少なくなく、本人も気付くことなく病気がさらに進行するまで医療施設を受診しないことが多いのです。
しかし、急ぎ足や階段を昇るなどの軽度の体動時に「息切れ」や「動悸」に気付くことがありますが、「加齢によるものだろう」とか、「休めば回復する」などと放置してしまうことが多いのも事実です。
どんな病気でも進行してしまってからよりも早期に治療を開始することで、さらなる重症化を食い止めることは可能です。近年、医学研究の発展に伴い20~30年前には全く不可能であった慢性呼吸器疾患の治療薬が開発され、早期に介入すれば、その予後も著しく改善されてきています。また、同様に呼吸ケア・リハビリテーションの方法も目覚ましく発展しつつあります。
以上のことより、少しでも呼吸器症状がある方、風邪に罹りやすくなったと思われる方、また最近同世代の人と一緒のペースで散歩できなくなってきたといった症状に気付いた方、特に喫煙者は、地域の内科医院や呼吸器科を標榜している医療施設で早めに相談することをお勧めします。
広報委員長 吉村一彦