学童期の近視について
2020年05月01日
近年近視の有病率は日本のみならず、世界的に増加傾向に有ります。人種間でも差が大きく日本、台湾、シンガポールを含む東アジア地域で急速に増加し、ヨーロッパ、アメリカ合衆国、オーストラリアなどの白人系の間でも増加していて2050年には全世界での有病率が60パーセントを超えるのではないかと言われています。近視の原因には遺伝と環境因子の両者が関与していますが、遺伝に関しては両親のどちらか、あるいは両親共に近視の場合にその子供に近視が発生する確率は、両親に近視の無い子供に比べて高いことが知られています。
環境因子についてはオーストラリアの研究データによると、近見作業(パソコン、読書等)を30分以上連続して行う場合と、30分以内で行った場合では前者の方が近視に成る学童が多かったとの結果でした。また本との距離を30センチ以上離しての読書は30センチ以内での読書に比べると明らかに近視の進行を抑えられたとの結果が出ています。
また屋外活動時間の長さが、近視進行に最も抑制的に働いている環境因子である事は現時点でのコンセンサスと成っています。
アメリカとオーストラリアの疫学調査によっても、1日の屋外活動の時間が1時間40分から2時間の群に比べて、1時間以内の群は近視の進行が速かったとの報告をしています。
多くの場合に近視は学童期に発症して大部分は22歳から23歳で止まりますが、その一部には強度近視に成り病的近視に進行するものも有ります。強度近視を少しでも減らすためにはできるだけ早期に近視を見つけて、学校医の先生や眼科医が介入して指導を行うことが大切と考えます。また近視の進行をフォローするために定期的な眼科受診をお勧めします。
広報委員会 中澤孝則